睡眠は、健康になる上で意識しなければならない、最重要項目
健康ブームの昨今、睡眠に注目が集まっています。
質の良い睡眠は疲労を回復させ、活力感をもたらします。
一方、徹夜をしたり、寝不足が続いた時は、身体や頭が重くなり、耐えがたい眠気に襲われます。
睡眠によって、身体の状態が良くも悪くも変化することは、誰しも一度は体感しているのではないでしょうか。
睡眠は、たった1時間の過不足で、私たちの身体に激的な変化をもたらすのです!
Ⅰ.最適な睡眠時間
睡眠は現在、平均すると毎日8時間程度とるのが理想とされています。
※個人によるばらつきもあります。
世界中で行われた数々の実験から、8時間程度の睡眠時間をとった被験者と、7時間以内の睡眠しかとっていない被験者を比較した際、8時間の睡眠をとった人の方が、様々な面で睡眠がもたらす健康効果を得られることが分かっています。
病気への疾病率が減り、若々しい身体を保ちやすくなり、集中力や記憶力が上がり、仕事の生産性も上がります。
一方、睡眠時間が7時間未満の場合は、パフォーマンスが落ちるばかりか、太りやすくなる、ガンへの罹患率が上がる、アルコールや喫煙への依存率が上がる、アルツハイマーになる可能性が高まるといったリスクを抱えやすくなります。
この7時間未満や、8時間というのは、おおよその目安なので、必ずしも万人に当てはまるわけではありません。
睡眠の質が良い人は、短時間の睡眠でも脳をリフレッシュさせ、身体を回復させることが出来ます。
しかし、睡眠の質が悪い場合、9時間以上寝ても身体が回復してくれない場合もあります。
いずれにしても、自分にとっての最適な睡眠時間や、睡眠の質の上げ方を学ぶことで、睡眠の持つ効果を最大限に受け取ることが出来るのです。
アメリカでは、労働者と賃金の関係を調査した際、睡眠時間が多い程、生涯の収入が多くなるというデータがあります。
もちろん、賃金が多い仕事や役職の方が、睡眠時間をコントロールしやすいという可能性や、エリートの人の方が健康に気を使っているという可能性も考えられます。
そのため、一概に寝た方がより多く給料がもらえるようになるとは言えません。
しかし、他国でも面白い研究発表があります。
オーストラリアの『スリープ』という学術誌での研究発表では、2016年~2017年の間に、睡眠不足によって生じたコストはなんと450億ドルにも及ぶそうです。
また、アメリカでの研究によると、睡眠不足による生産性の低下により、一人当たり年間2,000ドルを失っているともされています。
睡眠不足がいかにパフォーマンスに影響を及ぼすかが如実に分かる数字です。
賢明な企業の社長は、Googleをはじめ、社員の睡眠時間を確保する為に様々な対策をしているようです。
彼らはなにも、善意だけでそのような福利厚生を行っている訳ではないでしょう。
社員の睡眠の質を上げることが仕事の生産性の向上に繋がり、結果より多くの利益を生むことを知っているのでしょう。
この、睡眠がもたらす恩恵を、最大限、出来るだけ早いうちに受け取る為、知識と習慣を身に着けることは、確実に、その後の人生の質に大きな影響を与えることになるでしょう。
Ⅱ.何故睡眠が重要なのか
私は、健康を意識する上で重要となるのは、『運動』、『食事』、『睡眠』、『ストレス』、『精神』、これら5つの柱が大切だと考えております。
これらは相互に関係し合う関係である為、一概にどれが最も大切というのは言い難くはあります。
しかし、強いて大切なものを挙げるなら、睡眠はこの中でも1、2を争う大切なものだと思っています。
※もう一つは食事です。
理由は、この三つです。
- 睡眠は、生物が根源的に必要としている3大欲求の一つであり、生きていく上で必要不可欠な生理的行動であるため。
- 現代社会では、環境的の問題も強く加わり、意識しなければ理想的な睡眠を摂ることはとても難しいため。
- 睡眠がもたらす恩恵と、睡眠不足がもたらす悪影響がとても大きいため。
順番に見ていきましょう。
①睡眠は、生物が根源的に必要としている三大欲求の一つであり、生きていく上で必要不可欠な生理的行動である。
睡眠が、食欲、性欲と並び、三大欲求と呼ばれていることはご存知の方も多いかと思います。
睡眠は、ほぼ全ての生物に備わっている機能です。
※睡眠は、他の哺乳類や魚類、昆虫、更には脳のないクラゲのような原始的な無脊椎動物にまで備わっています!
なぜ全ての生物に睡眠という機能が備わっているのか、まだ不明なことも多くあります。
睡眠中は無防備のことから、野生動物にとって睡眠はリスクのある危険な状態でもあります。
それでも淘汰されずにあらゆる生命に備わっているということは、睡眠は、捕食されるリスクを負ってでも残さなければならない、重要な働きを持っていることは間違いありません。
睡眠を蔑ろにするということは、本能に刻み込まれている、生きていく上で最も大切な機能を疎かにしているということです。
②現代社会では、環境的な問題もあり、意識しなければ理想的な睡眠を摂ることはとても難しい。
睡眠は本来、体内時計と、脳内に蓄積するアデノシンという化学物質によってコントロールされています。
体内時計はおおよそ24時間を正確に計測してくれています。
しかし、厳密には24時間よりも少し長い時間に設定されているため、本来であれば日を重ねるごとにずれが生じていきます。
体内時計は、『日の光の影響』、『食事』、『運動』などの要因を利用し、体内時計を調整することで、ずれることのない規則正しい睡眠周期を作ってくれます。
この睡眠周期を味方に付けられるかどうかは、十分な睡眠の質と時間を得るために重要です。
しかし、現代社会ではその睡眠周期を乱すもので溢れています。
夜でも明るい街頭や、スマートフォンのブルーライトは、人を睡眠に促すメラトニンというホルモンの分泌を妨げます。
職業によっては、仕事の開始時間や終了時間の影響で、規則正しい睡眠周期を作る事が難しい場合もあるでしょう。
多忙な仕事や人間関係によるストレス、不安も、睡眠を乱す要因となります。
睡眠のため、全てを理想の環境に近づけることは中々難しいのが現代社会です。
そのため、現在の自分が置かれている環境を考慮しつつ、改善可能な部分を見つけ、自分に合った最適な睡眠プログラムを見付けていかなければ、中々良い睡眠を確保することは出来ません。
③睡眠がもたらす恩恵と、睡眠不足がもたらす悪影響がとても大きい。
睡眠にはまだ不明な点が数多くありますが、分かっている役割も多々あります。
睡眠は、脳に溜まった老廃物を除去し、記憶を整理し、過去の記憶と新しい記憶を結びつける役割があります。
そして、脳を疲労から回復しつつ、認知機能や記憶力を高め、判断力や発想力も養ってくれます。
また、覚醒自に経験したスポーツや、ピアノの演奏、キーボードのタイピングといった、あらゆる運動の記憶と習熟も寝ている間に行われます。
睡眠を語る上で外せないのは、身体の回復と、免疫力向上機能でしょう。
睡眠中は、身体から成長ホルモンが分泌され、筋肉や内臓などの疲労や損傷を回復してくれます。
また、ガンや病原菌を退治するナチュラルキラー細胞を活性化させ、免疫力を高めてくれます。
このように睡眠は、私たちに数多くの健康効果をもたらします。
反対に、睡眠時間の低下は、例え短期間でも、記憶力、運動能力、集中力、免疫力、精神状態に悪影響を及ぼします。
睡眠不足の状態が続くと、脳内には老廃物が蓄積し、将来的に認知症になるリスクも高まること、ガンの罹患率が高くなること、うつ病などの精神病を発症しやすくなること、また、それら様々な要因により、寿命が短くなることが分かっています。
Ⅲ.睡眠のメカニズム
睡眠の効果を語る上では、先ず、睡眠のメカニズムを理解しておかなければなりません。
生物には、概日リズムという体内時計が組み込まれています。
このリズムがベースとなり、寝る時間と、起きて活動をする時間がコントロールされていますが、体内時計は実際には24時間より少し長い為、定期的にリセットしなければ、狂いが生じます。
※体内時計は、およそ24時間と15分程度と言われています。
そのリセットの役割を担っているのが、『視交叉上核』と呼ばれる、視神経が交わる部分です。
この『視交叉上核』は、眼球から入ってくる光の信号を受け、体内時計をリセットし、日中は活動を促し、夜間になると人を睡眠へと促します。
また、体内時計や睡眠時間は、他にも様々な要因が関与し、変動しいます。
【睡眠に作用する要因】
・飲食の内容、及び時間
・精神状態
・ホルモンの分泌量
・代謝
・室温
・体温の変化
・日中の活動量
他にも、夜間の水分摂取によりトイレにいく為に起きてしまったり、大きな音や肩を叩かれたりなどの外的要因が加わることで目が覚めてしまったり、昼寝を深くとることで夜間の眠りが浅くなるなど、様々な要因が睡眠に作用します。
睡眠は、主にに二つの柱によりコントロールされている。
【メラトニンの分泌】
睡眠をコントロールをする上で欠かせないのは、メラトニンというホルモンです。
メラトニンは我々を睡眠へいざなう為のホルモンで、夜に分泌量が増え、明け方にかけて段々と分泌量が減っていきます。
そして起床前には分泌が止まり、血中メラトニン濃度が低下することで、私たちは覚醒へと導かれるのです。
メラトニンの分泌には光が関係しており、夜間になり光が減少すると、視交叉上核の松果体という部位が、メラトニンを分泌するよう指令を下します。
反対に、日の光を浴びることで、メラトニンの分泌量は低下します。
その為、朝に外に出て朝日を浴びることは、頭をすっきりと目覚めさせ、体内時計をリセットする上でとても大切です。
このメラトニンは、抗酸化作用が高い化学物質であり、更には身体に悪影響を及ぼすガンなどを発見する役割も持っていることが分かっています。
その為、私たちの身体を有害な活性酸素から守り、免疫力を強化する役割も担っていると考えられているホルモンです。
【アデノシンの蓄積】
睡眠には、アデノシンという科学物質も関係しています。
日中、起きて活動をすることで、アデノシンは砂時計のように脳内にどんどん蓄積していきます。
アデノシンが蓄積すればするほど、睡眠への欲求が高くなっていきます。
これを睡眠圧と言います。
そして、蓄積量が増え、ついにこらえきれなくなります。
このアデノシンの蓄積と、概日リズムがもたらすメラトニンの分泌が合わさり、我々は眠りにつくのです。
眠っている間は、グリンパティック系という、脳内の清掃メカニズムが働きます。
この清掃メカニズムの働きで、脳内の老廃物と一緒に、アデノシンも綺麗に掃除されます。
良質な眠りによりアデノシンが一掃されたことと、概日リズムによるメラトニン濃度の低下が合わさることで、私たちは覚醒します。
しかし、睡眠が不足してしまうと、アデノシンは脳内から除去できず残ってしまいます。
そのまま活動することは、昨日より多くのアデノシンが脳内に残った状態から一日をスタートすることになります。
そして、睡眠負債(睡眠不足の蓄積により心身の不調を来してしまう状態)となり、翌日はより強い眠気や疲労感と戦うハメになってしまうのです。
睡眠負債の状態が続いても、休日長く眠りにつくことで、身体は回復するという報告があります。
しかし、失った睡眠の効果を完全に取り戻せるかというと、そうではありません。
睡眠不足が一日でも続くと、身体には遺伝子レベルでの不可逆的な変化が起こることが分かっているので、不規則な生活習慣は、確実に寿命を縮めます。
明日はお休みだから、今日は夜更かししても良いなど、そういう問題ではないのです。
また、その日経験した経験(知識や運動)の記憶は妨げられ、翌日は免疫力、集中力、発想力など様々なパフォーマンスが落ちているため、生産性が下がっています。
やはり、規則正しい睡眠習慣を日々心掛け、それを乱すことは極力遠ざけるということが大切です。
Ⅳ.睡眠の種類
睡眠は、浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠に分けられます。
更に、ノンレム睡眠も、ステージ1からステージ4まで分けられており、ステージ4が最も深い眠りです。
睡眠は深ければよいというものではなく、このレム睡眠とノンレム睡眠は、それぞれ別の役割を担っています。
①レム睡眠
私たちが夢を見るのは、浅い眠りであるレム睡眠の間です。
レム(REM)は、rapid eye movement(素早い眼球の動き)の略称で、寝ている間に、眼球に激しい動きが現れることから名付けられました。
REM睡眠は、進化の過程では比較的新しい睡眠、つまり、高い知性を持つ生命に見られる傾向のある睡眠です。
その中でも人間がとるREM睡眠の割合は、他に類を見ない程長いとされています。
そして、眠りに対する研究が進むに、つれこのREM睡眠は、記憶の強化や感情の形成に関係しており、私たちの脳が発達し、高度な社会形態を持ち、文明を発展させるに至った要因の一つであることも判明しました。
②ノンレム睡眠
ノンレム睡眠はレム睡眠より深い眠りで、睡眠が深くなればなるほど、私たちは外部からの刺激を受けても覚醒しにくくなります。
これは脳内の視床と呼ばれる部位が、外部からもたらされる知覚情報をシャットアウトするためです。
この深い眠りが始まると、脳波はゆっくりとした規則正しいものになります。
また、それとは別に、小さな『睡眠紡錘波』という速い脳波も測定されます。
この睡眠紡錘波は視床から大脳皮質へと送られます。
この小さく鋭い波が、記憶の定着や、運動能力の発達を促すとともに、私たちが外部から刺激を受けても簡単に目を覚まさないよう、情報の精細を行っていると考えられています。
そして、眠りは更に深まっていきます。
深い眠りになるにつれ、コルチゾールというストレスホルモンが減り、ソマトロピンという成長ホルモンが増えていきます。
ソマトロピンは、私たちの筋肉、血管といった組織を回復し、免疫力を強化してくれます。
また、この深い眠りの間、脳は情報の整理も行います。
不要な情報を削除し、新しい記憶を入れるための容量を確保するのです。
③睡眠の周期
一晩の睡眠は、このレム睡眠とノンレム睡眠を、おおよそ90分から120分かけ、交互に繰り返します。
眠りの前半は、深い眠りであるノンレム睡眠の割合が多く、また最も深くなります。
反対に、明け方にかけて、徐々にノンレム睡眠の時間は短くなり、深さも浅くなっていき、代わりにレム睡眠の割合が多くなるように構成しております。
なぜ睡眠はこのような複雑な構成をしているのでしょうか。
明け方目を覚ましやすいよう、徐々に浅くなっていくという理由もあるかもしれませんが、他にも理由があります。
深い睡眠は、記憶の整理を行うのに対し、浅い眠りは記憶の強化を担当します。
これは、画家がキャンパスに絵をかく時と似ているかもしれません。
睡眠の最初に深い睡眠をしっかりととることで、記憶の整理を大まかにします。
これは、絵の大枠を描くイメージです。
大枠が描き終わったら、レム睡眠で細かな所を調整します。
しかし、絵はまだ前半なので、そこまで細かな部分に使う時間は必要としません。
そして、眠りの後半になると、絵の大まかな形は完成しています。
その為、最後は、細かな部分を描きこんでいくきます。
このレム睡眠とノンレム睡眠の比率にも、どうやら体内時計は関与しているようです。
したがって、夜更かしをすると前半の質の良い眠りが削られやすくなります。
反対に、適正な睡眠時間よりも早起きをすると、レム睡眠の時間が削られやすくなります。
また絵に例えるなら、大枠の書き込みが出来ていないまま絵を描き始めるのが前者、細部の作りこみが未完成なのが後者、といったところでしょうか。
深い眠りは免疫力や身体の回復に関係しており、浅い眠りは記憶の統合や発送力、精神の安定などに関係しており、どちらも大切な役割を担っております。
どちらの睡眠を削っても、死亡率に関係してくると言われているので、やはり、一概にどちらの睡眠を優先するべきかということは言えません。
Ⅴ.睡眠の質を上げる上で重要なこと
ここまでで、睡眠の大切さや、役割は大まかにですが説明をしてきました。
それでは、いよいよ、最後のまとめとして、どのようにしたら睡眠の質を確保できるかをお伝えさせて頂きます。
①起床時間と就寝時間を一定に保つ
最も重要で効力を発揮するのは、遺伝子レベルに組み込まれている、概日リズムを味方につけることです。
就寝時間と起床時間を常に一定に保つことが出来れば、身体は自然にその時間を覚えることが出来ます。
普段よりも夜更かしになるようなことはなるべく避け、休みの日もいつまでも長く寝ておらず、毎日常に同じ時間で就寝し、起床します。
加えて、食事のタイミングも一定に保てればなおベストです。
しかし、人によっては、仕事や家庭など、様々な都合で上手くいかない場合もあるでしょう。
体内時計は1日1時間程度の変化までしか対応出来ないと言われています。
一般的にベストとされる、7時に起きて23時に眠るという習慣の人を例に出すと、6時に起きて22時に寝ることや、24時に寝て8時に起きるという変化までならまだ対応が出来る可能性がありますが、それを超える変化には体内時計が対応出来ない可能性の方が高いということです。
不定期なシフトの場合は、このおおよそ1日1時間の体内時計が対応してくれる時間を上手く使うことで、少しずつ就寝と起床のタイミングをずらしていくと、多少睡眠の質が良くなる可能性が上がります。
また、本来の概日リズムである24時間15分の、『15分』を有効活用することも効果的です。
体内解時計は本来の時間よりも15分長いので、1日を短くして(早く眠って)体内時計を合わせるよりも、長くして(寝る時間を遅くして)体内時計を合わせる方が対応しやすいということです。
理想の時間は8時間ですが、不定期なシフトだと、理想の睡眠時間をとろうとして寝ることが出来ず、かえって寝不足になってしまう可能性も考えられるので、週のトータルで、上手く体内時計を調整しつつ睡眠負債を解消できる周期を探してみて下さい。
しかし、それでも、対応が難しい勤務形態の方もいらっしゃるでしょう。
一度睡眠時間を減らしてしまうと、睡眠負債を抱えてしまい、そうなるとより多くの睡眠をとるしか回復出来ず、多くの睡眠をとることで更に体内時計が崩れ、睡眠の質が低下するという負のスパイラルに陥る可能性も考えられます。
少しでも睡眠負債を減らすためには、次から紹介するような、様々な観点から睡眠を意識し、睡眠の質を上げていくしかありません。
②15分から30分の、昼寝の時間をとる
研究により、どうやら人間は遺伝子レベルで二相睡眠をとる生き物であることが分かっています。
ギリシャは元々昼寝をする文化が定着していました。
しかし、ある時期から、昼寝の文化を残す人と、捨てる人で分かれたようです。
そのギリシャで行われた調査によると、昼寝を止めた人たちは、昼寝の文化を続けていた人に比べ、心臓病になるリスクが37%も上昇したようです。
質の高い昼寝は、心臓病予防の他にも、記憶力、集中力、疲労を回復させ、ストレス解消や精神の安定にもなるとされています。
アルツハイマー病のリスクも低下するようです。
現代社会での昼寝の目安は、一般的に、1日15分~30分程度の昼寝をとることが健康に良いと言われています。
この時間は目安であり、昼寝はあくまで浅い眠りに留めておくことが大切です。
深い眠りに入ってしまうと、起きるのが難しくなり、ついつい1時間、2時間と長く寝てしまいます。
また、昼間に深い眠りにつくことで、脳内に溜まったアデノシンが除去されてしまいます。
一見良いことのようでもありますが、そうなると、睡眠周期が乱れ、メインである夜の睡眠効率が下がってしまいます。
その為、休日でも布団には潜らないことをお勧めします。
椅子に腰かけ、15分間目を閉じるだけでもリフレッシュ効果がありますので、効果的に昼寝を取り入れてみましょう。
しかし、午前も午後も疲労困憊まで練習するスリートや、真夜中になると光が完全になくなるキャンプなど、特定の条件と体質が重なることで、昼寝を十分とっても概日リズムが乱れず、夜もしっかりと眠れる可能性があります。
睡眠は取り過ぎるのが悪いわけではなく、リズムが乱れ、睡眠の質が下がることが問題です。
そのため、もし夜の睡眠のリズムが乱れないようであれば、深い眠りにつくのも健康に良い可能性が考えられます。
ただし、昼寝を十分とった上で、夜の睡眠の質が下がらない場合というのは特異的のため、その健康効果に関しての研究は見当たらないので、確実なことは言えません。
③カフェイン摂取のタイミングに気を付ける
コーヒーに含まれるカフェインが覚醒作用があり、眠気を覚ましてくれるということはもはや常識でしょう。
カフェインは、コーヒーのみならず、緑茶や、ほうじ茶、ハイカカオチョコレート、他にもエナジードリンクなどに含まれています。
それでは、カフェインがどのようなに眠気を覚ましてくれるのかを見ていきましょう。
カフェインは、アデノシンと似た形をした化学物質です。
眠け(睡眠圧)は、アデノシンという化学物質の蓄積により引き起こされるということは既に説明しました。
アデノシンと似た形をしたカフェインは、本来アデノシンが収まるはずのアデノシンの受容体と結合します。
それにより、アデノシンが出す眠気を脳に伝える信号が消されることで、眠気が感じなくなります。
カフェインは眠気を覚ましたい時は心強い味方です。
また、抗酸化作用もあり、適量であれば健康効果の高い成分です。
朝食にカフェインを摂ることは、体内時計をリセットし、元気な一日を始める上で役立ちます。
また、カフェインは摂取してから20分~30分遅れて効果を発揮するのですが、それを利用し、お昼にカフェインをとってから昼寝をすることで、ちょうど昼寝後のリフレッシュとカフェインの効果が重なりより集中力が高まった状態で午後をスタートさせることが出来ます。
しかし、問題はカフェインの代謝時間です。
カフェインは体内に取り込まれている時間が長く、完全に対外から排出されるまで10時間から14時間程掛かります。
その為、多量に取り過ぎてしまったり、午後の遅い時間に摂取してしまうと睡眠バランスを崩し、身体に悪影響を及ぼします。
カフェインを健康飲料として味方に付けられるかどうかは、摂取するタイミングが重要です。
少なくとも、1日2杯程度に留めつつ、就寝時間の10時間以降には摂らないことをお勧めします。
④目に入る光に気を付ける
概日リズムは、目に入る光によって影響を受けます。
起床後、太陽の光を浴びることは覚醒を促します。
体内時計に朝の始まりを知らせることは、夜、メラトニンの分泌を促す上で重要です。
しかし、現代社会では、夜間も様々な光で溢れかえっています。
スマホやタブレット、PCから発せられるブルーライトが睡眠を阻害するということは聞いたことがあるでしょう。
この目に入る強力な光は、脳に混乱を生じさせ、朝か夜か分からなくし、メラトニンの分泌を低下させることで、体内時計を狂わせる要因となります。
そのため、就寝の2時間前には、これらの光をなるべく避けましょう。
もしそれが難しい場合、スマホの夜間モードを使用し、光を抑えるだけでも多少の効果が見込めます。
また、部屋の明かりを変えてみるのも、体内時計のコントロールに一役買います。
覚醒したい朝は明るい光を、反対に、就寝前は暖色系の光を利用しましょう。
サングラスなど、光をカットするものを装着することもお勧めです。
⑤空気の循環を良くする
睡眠の質には、酸素濃度も影響します。
可能であれば窓を開けて寝たい所です。
しかし、それは防犯上難しい場合もあるでしょう。
その場合は、寝室の扉を開けておくだけも効果があります。
⑥体温と室温を調整する
人の体温は、概日リズムの影響で、夜になると自然に下がるようになっています。
この体温、正確には、皮膚ではない、深部体温の変化が睡眠を促します。
そのため、部屋の温度が暑すぎると、人は眠りにつきにくくなります。
室温は、夏は空調を設定し、部屋の温度を下げましょう。
逆に冬も、暖房で温かくなり過ぎないよう気を付けなければなりません。
最適な温度は20度以下とされているので、少し寒く感じるかもしれませんが、19度程度がお勧めです。
また、寝る前にお風呂に長くつかり、身体を温めることも快眠に繋がります。
先の説明だと、お風呂に入ると身体が温まり体温が上がってしまい、逆効果と思われる方もいるかもしれません。
しかし、お風呂に入ることで、手足の毛細血管が拡張します。
そして、そこから効率的に深部の温度を放熱出来るので、睡眠に入りやすくなるのです。
靴下を履いてしまうと、この放熱機能が上手く働くなり、睡眠に入りにくくなると言われています。
⑦日中、活動的に過ごす
起きている間は活動的に過ごし、脳と身体を疲れさせることで、睡眠に入りやすくなります。
読書をして新しい知識を入れたり、何か新しい経験をすることは、脳のトレーニングになるだけでなく、睡眠に入りやすくする上でも大切です。
運動は脳も身体も使うので、健康面でも是非習慣化して欲しいと思います。
しかし、寝る前に交感神経が昂るような激しいスポーツやウエイトトレーニングを行ってしまうと、反対に中々寝るのが難しくなります。
運動の種類や強度にもよりますが、就寝の3時間前には終わらせることをお勧めします。
⑧食事の時間と内容に気を付ける
夜間の過食は睡眠の妨げになります。
西洋には、「朝は皇帝のように、昼は王子のように、夜は貧者のように食べよ」という言葉があります。
現在は日本でも、食の乱れから朝の欠食が目立ちますが、本来、これから活動する朝こそ最も食に気を付けなければなりません。
逆に、夜は早い時間に食べ終わるようにしましょう。
夜は、腹7分目程度に抑えつつ、飽和脂肪酸の多い赤身肉などを控えましょう。
また、意外かもしれませんが、基本的には健康に良いとされる食物繊維が豊富な野菜類も、夜に多量に食べると腸内にガスを発生させてしまい、睡眠の質を下げてしまうと言われています。
そのため、タマネギ、サツマイモ、アスパラガスやブロッコリー、豆類などガスが発生しやすい野菜は避けるか少な目にしつつ、消化の良い食事を、栄養バランスに気を付けながら少量食べるのがお勧めです。
【補足】
よく、牛乳や豆乳を寝る前にとると眠りにつきやすくするという報告もあります。
これは、牛乳や豆乳、他にもバナナや卵などに含まれているトリプトファンというアミノ酸が、幸せホルモンであるセロトニンの材料となり、セロトニンは、人を睡眠へといざなうメラトニンの材料となるという理由があります。
しかし、トリプトファンはサプリメントとしても販売されていますが、これらは一般的に午前中に服用しないと効果がないとされています。
その為、就寝時に牛乳や豆乳を飲むことで、果たしてメラトニンの分泌量が上がるのかには疑問が残ります。
一方、朝食にしっかりとトリプトファンの含まれる食事を摂ることで、その日の夜に眠りに就き易くなるという研究が報告されています。
また、豆乳に関しては、大豆に含まれるイソフラボンが更年期障害に効く可能性があるとされているので、それが転じて寝る前に飲むといいとされるようになった可能性があります。
しかし、やはり就寝前の飲食は出来るだけ避け、水やノンカフェインのお茶以外飲まない方が良いでしょう。
一方、牛乳に関しては、別の理由が考えられます。
それは、夕方に絞られた牛乳は、牛乳そのものに多くのメラトニンが含まれている可能性があるということです。
夜間の母乳にメラトニンが含まれるのは人の母乳も同じらしく、自分の子供が安眠できるために備わった機能のようです。
実際、夕方に搾られた牛乳に、自然な睡眠を促す効果があるという研究が報告されています。
しかし、スーパーで売っている牛乳が、果たして夕方に搾られたものかどうかの判断するのは現実的ではありません。
そため、この情報は豆知識程度に留めておくのが良いでしょう。
それでは、夕方の牛乳の代わりになるようなものは何かないのでしょうか。
実は、あります。
メラトニン自体、含まれている食物は複数あるのですが、その中でもサワーチェリーという酸味が強いサクランボには、天然のトリプトファンが多く含まれています。
どうしても寝付けないという方や、寝る前に口寂しくなる方は、是非サワーチェリーを試してみることをお勧めします。
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⑨寝酒はしない
お酒が好きな方にとっては残念なお知らせとなりますが、寝る前のアルコールは睡眠の質に大きく影響します。
アルコール好きの中には、お酒を飲んだ方が寝つきが良いという人もいるでしょう。
しかし、専門家は、お酒を飲んで眠る事は、眠りでなく気絶に近いと警告しています。
アルコールは脳の前頭前皮質に鎮静作用を及ぼし、結果眠りにつきやすくします。
これは、麻酔をするのと同じような状態のため、気絶と評するのも納得です。
アルコールは眠りを浅く、そして断片的にし、睡眠の質を大きく下げます。
また、喉の筋肉を弛緩させることで、無呼吸症候群が起こる可能性も上がります。
アルコールは代謝するのに時間が掛かるだけでなく、発がん性のあるアセトアルデヒドも生成します。
加えて、アセトアルデヒドは、強力なレム睡眠の阻害剤となります。
レム睡眠が阻害されると、記憶の処理が出来なくなり、精神や、記憶力などに影響を及ぼします。
そして、アセトアルデヒドが分解されると、脳は失ったレム睡眠の分を取り戻すため、今度はノンレム睡眠を削り、レム睡眠の比率を高めます。
記憶を統合するレム睡眠と、記憶を整理するノンレム睡眠が正しい周期で行われることが本来の睡眠に必要なので、そのバランスを崩すことは脳にとって悪影響を与えます。
もしお酒を飲むなら、夜ではなく昼間、適量が良いでしょう。
しかし、それでもお酒には注意が必要です。
よく、お酒は適量なら健康に良いという研究報告もあります。
これは、全く飲まない人よりも、多少飲む人の方が寿命が高い傾向があるからですが、そもそも全く飲まない人は、元々持病を抱えており、飲まないのではなく飲めないという説があります。
赤ワインなど健康効果があるとうたわれるお酒も含め、お酒はたとえ適量でも、100害あって1利ある程度に考えておいた方が良いでしょう。
⑩不安やストレスになる要因を取り除く
不安やストレスも寝つきを悪くする原因となります。
その為、それらのストレスや不安を取り除いたり、軽減することで、安眠に繋がる可能性があります。
ローズマリーやレモンバームなどのハーブは副交感神経を高め、リラックス効果があるので、寝る前に飲むと寝入りが良くなる可能性があります。
リラックスするため、お風呂上りに、ゆっくりとした呼吸と共に、気持ちの良い範囲でストレッチを行ってみるのも良いでしょう。
また、寝る前に頭の中を整理しておくことも、不安解消に繋がります。
例えば、明日の予定を紙に書き出し、整理してみる。
何か不安がある場合、その不安になる元を紙に書き出してみる、などです。
布団の中でも不安なことを考えてしまうと、眠りが悪くなります。
そして、布団にもぐったらなるべく楽しいことを考えましょう。
行きたい旅行先や、週末約束しているデートの約束、もし犬や猫を飼ったらどのような生活になるかなどです。
カリフォルニアで行われた研究では、就寝前に楽しいことを考えてから眠りについたメンバーは、他の思考をしながら眠りについたメンバーよりも3倍早く眠りに付けたという研究があります。
最後に
いかがだったでしょうか。
睡眠はとても重要ですが、自分の意思でコントロールをするのは難しい部分があります。
そのため、自分の体質を理解し、どのような方法を取り入れ睡眠の質を上げていくかはとても重要です。
今回の記事が、読んで頂いた方の人生に少しでもお役に立てられたら幸いです。
私自身不規則なシフトなどで、どのような方法で良質な睡眠をとっていくか試行錯誤している部分もありますので、また良い情報や体験などがありましたら記事にしていきたいと思います!